●耳鼻咽喉科 ●アレルギー性鼻炎 ●中耳炎 ●めまい / 兵庫県 西宮市 薬師町 8-15 TEL.0798-64-8711(ハナイイ)
しおみ耳鼻咽喉科クリニック
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2023年11月1日より診療時間が下記に変更となります。
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こんな症状の方へ
アレルギー性鼻炎 中耳炎 めまい 副鼻腔炎(蓄膿症) 難聴 顔面神経麻痺


多血小板血漿を用いた鼓膜形成術について
当院では、テルダーミスという、化粧品などにも用いられるコラーゲンでできた、皮膚欠損を覆うためのスポンジ様の膜に、多血小板血漿を染みこませたものを用いて、鼓膜の穴を閉じる手術を行っています。この手術法は、2007年大分大学の吉田和秀先生によって最初に報告されました。多血小板血漿とは、採血した自分の血液を、遠心分離を用いて血小板を2〜3倍に濃縮したものですが、血小板の中には、傷を治すために必要な多数の成長因子が含まれており、これをコラーゲン膜に注入することで、鼓膜の穴が閉じようとする力が強くなります。
手術は、局所麻酔で行います。麻酔と言っても耳に注射するのではなく、麻酔のお薬を染み込ませた小さい綿を数個耳の穴に詰めて10〜15分ほど待つだけですので、痛くはありません。次に10〜15cc採血し、これを2回遠心分離器にかけて、血小板を濃縮します。これの作業に20分ほどかかります。濃縮された血小板は、そのままでは働きませんので、そこから成長因子を放出させる(活性化する)ためにカルシウムを混ぜて,多血小板血漿の準備は完了です。鼓膜の穴を閉じる細胞は、傷から供給されますので、穴の縁を少し切り取って傷を作る必要があります(図1)。当院では、穴が小さい場合を除き、これをOtoLAMという特殊なレーザーを用いて行っています。このレーザーを用いることにより、どの様な状況でも正確で確実に鼓穴の処理ができます。鼓膜側の準備が終わりましたら、先ほど作った多血小板血漿を、鼓膜の穴より大きめに切ったコラーゲン膜に注入し、これを鼓膜の穴にはめ込めば終了です。厳密に言いますと、最後に、コラーゲン膜を固定するため,蟹の甲羅から作ったベスキチンという紙のようなものを上に置いて終了です。 これらは、手術室のような特殊な部屋ではなく、通常の診察室で診療用椅子に座ったまま行い、かかる時間は、麻酔から多血小板血漿作成も含め、40〜50分程度です。入院は当然必要なく、手術終了後はすぐにお帰り頂けます。手術後穴の縁の傷から、テルダーミスを足場にして鼓膜が伸びてきて、穴は閉じていくのですが、はめ込んだテルダーミスには、その乾燥を防ぎ位置を安定化させるため、シリコンの薄い膜が付けてあります。これを手術の1〜2ヶ月後、自然に外れるのを待って、取り除けば一通りの治療は終了です(図2)。穴が大きい場合、最初よりも穴は小さくなるけれどまだ穴が残ることがあります。この場合は、新しくできた鼓膜が安定したら同じ手術を行い、完全に閉じるまで2〜3回繰り返します。
1回の手術につき、術後2〜3回通院して頂き、傷の様子を見せて頂くだけで、頻回の通院は必要ありません。他府県など遠方から来られる患者さんの場合は、耳の痛みや耳だれなどの特別の異常がない限り、基本的に手術の約1ヶ月後に拝見するだけにしています。
この手術の元になったのは、自分の耳の後ろから取った皮下組織を生体接着剤でくっつけて穴をふさぐ接着法という鼓膜形成術ですが、多くは短期入院で行われます。また、耳の後ろを2cmほど切るため、手術後に洗髪などで制限が生じますが、本法ではその様なことはありません。また、接着法で用いる生体接着剤は血液製剤であり、ウイルス感染が起こる可能性がゼロではありませんが、自分の血液を用いるこの方法では、ウイルス感染のリスクは全くありません。
手術成績ですが、我々が平成18年12月から平成26年10月に行った34耳で、トータルの穿孔閉鎖率は、88.2%でした。大きさ別では、小穿孔100%(20/20)、中穿孔70%(7/10)、大穿孔75%(3/4)であり、穴が大きくなるにつれ、閉鎖までの手術回数は増加していました。これは、接着法(80〜92%)に比べやや劣るかほぼ同等の成績です。中でも、滲出性中耳炎に対して行う換気チューブ留置後に残る様な小さい穴に対しては、非常に良い成績であり、まず第一に考えるべき手術法だと言えると思います。
良いことばかりの様ですが、接着法同様、この手術もどんな鼓膜穿孔に対してでも出来る手術ではありません。 鼓膜の奥に広がる空間(中耳腔)にCT上炎症の所見が少なく、鼓膜を綿などで簡単にふさぐ検査で一時的に聴力が改善し(音を伝える3つの骨―耳小骨―の周りに病変が少ない)、中耳腔と鼻をつなぐ換気用の管(耳管)の働きに大きな問題がない事などが前提になります。以上の条件を満たしていても、鼓膜の穴が全周にわたって耳の穴から見渡せないと手術はできず、あまり大きな穴や薄い鼓膜もうまく行かないことがあります。鼓膜に穴があいていると言われている方は、一度当院医師にご相談下さい。

<手術の対象となる患者さんの年齢>
これまで手術した最少年齢は、6歳です。しかし、局所麻酔で行う関係上、じっ としていることが出来ないお子さんは、手術することが出来ません。また一般的 な耳の手術と同じで、耳管の働きが悪い場合、これが成熟する9歳前後まで手術 を待つ場合もあります。

<手術後の注意事項>
手術翌日からの注意事項としては、洗髪時などに耳に水が入らないようにするのと、鼻を強くかまないように気をつけて頂くだけで、普通に生活して頂けます。術後の痛みもほとんどありません。鼓膜がしっかりしてくる1ヶ月後くらい(出来れば3ヶ月)までは、飛行機への搭乗は避けて頂いていますが、新幹線は問題ありません。


【図1:手術の手順】
(1) 針で鼓膜穿孔の縁を一部切除する。(2)、(3)その後、穴より少し大きめに形成したテルダーミス(水色と斜線で示したのは、テルダーミスを補強、固定するシリコン板)を穴にはめ込み手術は終了する。


【図2:実際の症例】

     


院内風景
院内風景

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